令和5年度 活動方針

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令和5年度 全特協の活動方針

 答申「「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~」を踏まえ、「新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議」報告(令和3年1月)が提示 された。そして、「特別支援教育を巡る状況と基本的な考え方」には、「共生社会の形成に向けて、障害者の権利に関する条約に基づくインクルーシブ教育システムの理念が重要であり、その構築のために特別支援教育の取組を着実に進 めていくことが必要」であると記載された。ここで報告された方策の実現を目指して令和4年度に設置された「特別支援教育を担う教師の養成の在り方等に関する検討会議」では、特別支援教育を担う教員の専門性の向上策として、全ての教員に特別支援学級等の経験を求めることが示された。
 また、令和4年12月には10年ぶりとなる「通常の学級に在籍する特別な教育的配慮を必要とする児童生徒に関する調査」の結果が公表された。調査結果は、小・中・義務教育学校の段階においては、学習面又は行動面で著しい困難を示すとされた児童生徒が8.8%(推定値)の割合で通常の学級に在籍しているとされた。高等学校においても2.2%の割合であった。この結果を踏まえ、「通常の学級に在籍する障害のある児童生徒への支援の在り方に関する検討会議報告」(令和5年3月)は、今後、校内委員会の機能強化、自校通級や巡回指導による通級による指導の充実、特別支援学校のセンター的機能のさらなる充実について提言している。
 平成19年度より本格実施されてきた「特別支援教育」は今年度で17年目を迎えるが、特別支援教育を必要とする児童生徒は増加し続けている。これまで以上に、全ての学校においてインクルーシブ教育システム構築を目指し、校内委員会等の支援体制を充実・発展させていくとともに、全ての教員が特別支援教育に係る専門性を身に付けることが最重要課題となっている。
 現在、全国の小・中学校・義務教育学校では83%(令和3年5月の学校基本調査)に特別支援学級が設置され、32.6万人の児童生徒がその障害特性等に応じて編成された特別の教育課程により学んでいる。さらには、通常の学級に在籍する児童生徒のうち16万人が通級指導教室等において、通級による指導を受けている。特別支援学級並びに通級支援教室の設置校長として、特別支援学級並びに通級指導教室を担当する教員の資質・能力の向上を図ると同時に、通常の学級に在籍する障害のある児童生徒等への支援の充実を図っていくことが求められている。
 なお、令和4年9月の国連勧告では、我が国の特別支援学校、特別支援学級、通級指導教室など多様な学びの場において、障害のある児童生徒の一人一人の教育的にニーズに応じ、自立と社会参加を促す適切な指導・支援ができる体制整備をしてきたことや共生社会の実現を見据え行ってきた交流及び共同学習の在り方に関して厳しい指摘があった。本協会としては、国が推進している特別支援教育の理念や方針を踏まえ、特別支援学級と通級指導教室の存在意義を高められるよう、さらなる充実を図っていきたいと考える。
 以下、本年度の活動方針を記す。

 1 基本方針
(1) 障害者の権利に関する条約の批准を受けて、共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築を目指した特別支援教育の推進・発展を図る。特に、特別支援学級や通級指導教室での指導の充実を図る。
(2) 通常の学級に在籍する行動面又は生活面に困難さを抱える児童生徒に対して、校内における支援体制強化を図るとともに、全ての教員の特別支援教育の専門性向上を目指す。
(3) 研修・研究活動等の充実を図り、学校長の特別支援教育に係る専門性を高める。
(4) 全国の特別支援学級及び通級指導教室の状況を把握するため調査研究を行う。
(5) 幼稚園・保育所・子ども園、高等学校との連携を強化し、生涯を見通した特別支援教育を推進する。
(6) 国及び都道府県の関係機関との連携を深め、共通する課題の解決を目指す。

2 具体的な活動
(1) 本協会から各関係機関への提言を作成し、特別支援学級や通級指導教室を設置する学校における特別支援教育の推進を図る方針を明確にする。
(2) 研修・研究協議会、副会長会、役員・常任理事会等の活動内容の充実を図る。
① 各県並びに各ブロック研究協議会への協力を行う。
② 研修・研究協議会を原則、対面開催で実施する。
ア 第一回全国理事研究・研修協議会 定期総会 6月1日(木) 日本青少年会館ホテル
イ 第60回全国研究協議会(第二回全国理事研究・研修協議会含む)愛知大会 8月3日(木) 蒲郡市民会館
ウ 関東甲信越地区研究協議会 栃木大会 11月10日(金) 栃木県教育会館大ホール
エ 第三回全国理事研究・研修協議会 和歌山大会 1月26日(金) ホテル アバローム紀の国
  全国副会長研修会 第1回5月31日、第2回8月3日、第3回1月26日
③ 諸事業の円滑な執行のため、役員・常任理事会を年8回開催する。
(3) インクルーシブ教育システム構築に向けて、特別支援教育の内容及び方法の改善・充実を図るための諸事業を行う。
① 実践事例集を出版する。実践のテーマは、全国副会長会で募集する。
② 関連資料等に関する情報の共有を目的に、本会ホームページの活用を図る。
(4) 小・中・義務教育学校の特別支援教育の現状と課題に向けた調査研究を実施し、全国理事研究・協議会で報告するとともに、各都道府県に周知を図る。また、文部科学省への提言資料とする。調査研究では、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所の協力を得て実施する。
(5) 文部科学省、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所の施策や諸事業への協力、各都道府県や政令指定都市等の教育委員会の特別支援教育に係る施策と連携する。
(6) 全国連合小学校長会、全日本中学校長会、全国国公立幼稚園・こども園長会、全国高等学校長会、全国特別支援学校長会、全国特別支援教育推進連盟、全日本特別支援教育研究連盟、全国手をつなぐ育成会連合会などの関係団体との連携を深める。
① 全日本特別支援教育研究連盟全国大会 10月19日(木)・20日(金) 徳島県
② 全国特別支援教育推進連盟全国特別支援教育振興協議会 12月1日(金) 東京都 

3 提言

障害のある人もない人も互いに支え合い、尊重し合う「共生社会」の実現を目指し、学校においては、全ての子供一人一人の力を伸ばすとともに、多様性を理解し様々な人々が共存しながら豊かに暮らしていくための社会を形成する子供の育成を推進します。
(1) 多様な人々が共に暮らせる住みやすい町づくりの推進
(2) 障害者理解教育を推進するための活動の拡大
(3) 障害者自身の意思を大切にした社会づくりの推進
(4) 障害者差別解消法に基づく基礎的環境整備や合理的配慮の充実
(5) 生涯を通じた支援を行うための個別の支援計画の作成・活用の周知及び充実
(6) コミュニティ・スクールにおける取組等、地域とともにある特別支援教育の推進

インクルーシブ教育システム構築の理念を踏まえた教育が学校で行われ、障害のある子供もない子供も共に学び成長していくとともに、関係する機関が連携を深め、地域において生涯を見通した支援がより充実することを推進します。
(1) 幼稚園・保育所、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校等との円滑な移行の促進
(2) 家庭・教育・福祉の連携「トライアングルプロジェクト」による関係機関との連携促進
(3) 特別支援学級における学級編成基準の基礎定数の引き下げの実現及び通級による指導の基礎定数化を受けた計画的な教員配置
(4) 特別支援学級や通級による指導の場の障害特性に応じた施設設備の充実
(5) 特別支援教育の専門性を身に付けた管理職の育成
(6) 特別支援教育に関わる教員の育成及び体系的・系統的な教員研修の実施
(7) 障害者権利条約を踏まえた柔軟な就学相談を実施し、保護者を支援するための相談体制の充実
(8) 特別支援学級や通級による指導担当教員の特別支援学校教諭免許状保有率向上に対する支援の充実
(9) 特別支援教育コーディネーターの専任化の実現

障害のある子供の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、子供一人一人の教育的ニーズを把握し、そのもてる力を高め、生活や学習上の困難を改善・克服するために多様な学びの場を充実させるとともに、指導や支援の充実を推進します。
(1) 全ての教職員が特別支援学級等の担任として複数年経験が積める人事配置の確実な実施
(2)  特別支援学級並びに通級指導教室への専門性を有する人事配置の推進
(3) 特別支援学級や通級指導教室担当教員の専門性向上のための特別支援学校教諭免許状保持率の向上への働きかけ
(4)  配慮が必要な児童生徒に対する校内支援体制整備の充実
(5) 学校における合理的配慮の提供に関する取組の推進 
(6) 互いが貢献し合い、多様性を尊重するための障害者理解教育の推進
(7) 特別支援学級や通級指導教室の教育課程の充実及び理解啓発の推進
(8) 特別支援教育コーディネーターの育成及び位置付け
(9) 切れ目ない支援体制を継続するための学校間の円滑な移行支援の強化
(10)  特別支援学校のセンター的機能を生かした相互連携の推進

障害のある子供も積極的に学習活動に参加し、障害の有無に関わらず、一人一人が豊かに成長できる学校づくりを推進します。
(1) 関係機関と連携した個別の教育支援計画や実態に応じた個別の指導計画の作成と活用の充実
(2) 特別支援学級や通級による指導における各障害種別に応じた指導内容・方法の充実
(3) 全ての児童生徒にとってわかりやすい授業づくりの推進
(4) 障害のある児童生徒と障害のない児童生徒の交流及び共同学習の一層の充実
(5) 学校間の指導の連続性に関する取組の推進
(6) 特別な支援を必要とする児童生徒の進路指導及びキャリア教育の推進
(7) 学校と福祉機関や医療機関、民間施設との連携の推進
(8) 地域や保護者との連携の強化